◇ 「バイト頑張って」 「…ありがとうございます」 三琴先輩はバイト先の近くまで送り届けてくれた。 真渡くんに見かけられてしつこく言及されるのも嫌だったので、手前の路地までにしてもらったのだ。 先輩は私の頭を優しく撫でると、「また連絡するね」といってちいさく微笑んだ。 それだけできゅうっと胸が鳴るのは、 先輩の大きな手が私に触れたせいか、 彼に対する気持ちが募るからか───… きっとぜんぶに当てはまるのだと思う。 夏の夕方の透き通った空気が、ひどく心地よかった。 ―― ―