「んん?俺のこと知ってるの?」
「あ、いや…」
「え、てか同じ学校じゃん。何年生?」
黒髪の彼──ではなく、彼の後ろから顔をのぞかせたお友達さんのほうが質問を重ねる。
「2年です」と答えると、「後輩かー」とお友達さんは何故かため息をついた。
「あの、…振られたって、聞こえちゃったんですけど」
「んー…?」
「三琴(みこと)先輩、…春(はる)先輩と別れちゃったんですか」
彼からしたら初対面の後輩にこんなことを聞かれ、なんのこっちゃと思ったかもしれない。
けれど、あまりにも衝撃的だったのだ。
「…と、突然ごめんなさい…、けど、2年生の中でも有名だったんです。三琴先輩と春先輩」
私の言葉に、彼は苦笑いを浮かべた。「あー、…はずかしー」と言ってくしゃくしゃと髪を掻く。
その瞳が寂しげで、なんだか、少しだけ自分と同じ匂いがした。
「今日振られたんだよね。悲しいことに」
「…そ、なんですね」
「まあ、ミスコン出てたし、そりゃ知ってる人は知ってるよね。…あー、まじ恥ずいな」



