きみがため

「水田ちっこいから、女幽霊って言うより、妖怪みたいになりそうだな!」

とたんに教室は笑いに包まれた。

背後にいた杏が私の頭を撫でながら、「ええ~、ぜったいかわいいよ。怖くなさそうだけど」と面白半分に言う。

みんなやいのやいのと好き勝手なことを言って、結局その話は流れてしまった。

日々、こんなやりとりの繰り返し。

ときにからかい合い、ときに言い合いになりながら、なんとなく作業が進んでいく。

でもそんな空気感が、クラスがひとつになっていることを教えてくれる。

そして自分が、その中にいることも。

小道具係の作業を手伝いながら、ふと充実感が胸を駆け巡った。

美織と杏と気まずくなり、夏葉とも仲良くなかった頃は、この教室にいるだけで、息がつまって死んでいるみたいだった。

こんな風に、いるだけで胸が和むような場所になるとは思ってもいなかった。

教室の隅で、音響係からの質問を受けている桜人に目をやる。

皆を上手に采配し、的確に、でも嫌味なく指示を出す桜人は、今ではすっかり皆に頼りにされている。

ある意味、ちょっとズレているところがある増村先生より一目置かれていた。

同年代とはいえ、なんだかお兄さん的なポジションにいる。

「水田さん」

桜人を見ながら物思いにふけっていると、声を掛けられ、我に返る。

茶色の巻き髪を今日はポニーテールにしている浦部さんが、茶封筒を片手に立っていた。