きみがため

次々と意見が上がり、話し合いの末、最終候補が三つに絞られた。

「じゃあ、目を瞑って顔伏せて。ひとつだけ、やりたい出し物に手を上げて」

多数決の結果は――お化け屋敷。

すぐに桜人はメモに何やら書き、私に見せて耳打ちしてくる。

「これ、黒板に書いて」

道具係、衣装、お化け役、受付、音響。

「来週の学活では、役割を決めるから。どれがやりたいか、考えといて」

よく通る声で皆に呼びかける桜人。

あっという間に、バラバラだったクラスをまとめてしまった。

いつもひとりでいる、寡黙な普段の様子からは考えられない。

誰もが、桜人の頼りがいのある雰囲気に魅了されていた。

さすが、もと生徒会長。

それに考えてみれば、自分よりもはるかに年上の人たちに紛れて、立派にバイトをこなしてるんだ。

このクラスの誰よりも、実はしっかり者なのかもしれない。

「小瀬川くん、めちゃ頼りになるね」
「やばい、かっこいいんだけど」

ヒソヒソと囁かれる声。

桜人を見る、皆の期待のこもった眼差し。

後ろで板書しかしていない私のことなんて、視界の隅にも入ってなさそうだ。

軽い劣等感を覚えていると、美織と杏の様子が目に映った。

美織はつまらなさそうに窓を見ていて、杏はこそこそと机の下で何かやってる。多分、スマホを操作しているのだろう。

桜人の活躍にクラス中がにわかに湧いている中で、ふたりだけが白けた雰囲気を醸し出していた。

そういえば、多数決にも、ふたりは参加していなかった。

そして学活が終わるや否や、申し合わせたように、ふたりそろって教室から出て行く。

「…………」

胸が、重苦しくなる。

美織と杏は、私を困らせるために、文化祭実行委員に推薦した。

彼女たちが見たかったのは、クラスをまとめることができなくてあたふたする私の様子だったんだと思う。

だから、桜人のおかげでクラスが思いがけず盛り上がって、面白くなかったのだろう。

肩を寄せて何かを話しながら廊下へと消えて行く美織と杏を、私は複雑な気持ちで見送った。