「そうなの? そんなふうには見えなかったけど……」

私とは違って、谷澤さんは、あの目立つグループにしっくり馴染んでいるように見えたのに。

「クラス替えがあって、なんとなく一年のとき同じクラスだった子たちと一緒にいるようになっただけ。でも男の話題ばっかりで、ついていけないの。誰がかっこいいとか、誰と誰が付き合ったとか。そういうの、私全然興味なくって」

谷澤さんが、うんざりしたように肩を竦める。

「本当はね、竜王戦の話とか、巨人戦の話とかしたくてうずうずしてるのに、あのグループの中で言えないじゃん」

「竜王戦……? 巨人戦……?」

首を傾げると「私、将棋と野球が好きなの! あのグループでそんな話しても、え?って顔されるから、こんなこと言えなくて」と谷澤さんは笑った。

裏表の感じられない、子供みたいな笑い方だった。

――ああ、この人好きだな。

無邪気な彼女の笑顔を見て、直感的に思う。

なんとなくの親近感を覚えて、気づけば谷澤さんの隣にすとんと腰を降ろしていた。

「……でも、私、将棋にも野球にも興味ないよ?」

「あははっ、いいの。私も別に、ずっとその話してるわけじゃないから。だけど水田さんなら、私が本当の姿をさらしても、受け入れてくれるような気がしたんだ。そうでしょ?」

「……うん。受け入れるっていうより、夢中になれるものがあって、素敵だなって思った」

素直に答えると、谷澤さんは、また屈託なく笑う。

「よかった! ねえ、これから下の名前で呼んでいい? 私のことも夏葉って呼んでくれていいから」