別に、喧嘩をしたわけじゃない。

ただ、ふたりの作る空気に入り込めないだけ。

そのことに、前からふたりとも勘づいていて、徐々に行動に移した。

一緒にいて楽しい人に傍にいて欲しいと思うのは、当たり前のことだから。

今となっては、休憩時間も、移動のときも、ほとんど私に声がかかることはない。

それでも、お弁当の時間だけは、まだ三人で机を囲んでいた。

私はふたりとほとんど話をすることなんてないし、明らかにはみ出してるけど、これは言ってみれば形式のようなもので、美織と杏は義務的に私と机を囲む。

「それでさ、そのときの写メがあるんだけど」

「なになに? 見せて見せて。あははっ、めちゃくちゃ面白い!」

「でしょでしょ!」

お弁当を食べながら、いつものように、ふたりははしゃいでいる。

ふたりが作る独特の波長に乗れない私は、ひとり黙々とお弁当を口に運ぶ。

入りたい。けど、入れない。

中学校のとき、家庭事情を知られて一線を引かれたときの苦い思い出が、また私に歯止めをかける。

ふたりの笑い声が、周りの楽しそうな声が、さらに私を追い込む。

同じ机にいるのに、まるで見えない仕切りが私たちを隔てているみたい。

楽しそうなふたりの隣で、黙ってお弁当を口に運ぶ時間は、地獄のようだった。

きっと、私はもう、ここでお弁当を食べない方がいい。

だけど、自分から出て行く勇気もない。