君が閃いた、面白い遊びがあった。

ルールは簡単。

相手のためにできることを、互いに、順番に言い合いっこすればいい。

君のために、歌を歌う。
君のために、空を飛ぶ。
君のために、夢を見る。
 
ただ、それの繰り返し。

本当にできることでも、そうでなくてもいい。

だけどずっと本か病室の天井ばかりを眺めていた僕には、それはこの世の何よりも尊い遊びのように思えた。
 
病院の真っ白な壁に、青々と生い茂る芝生、大きく育った樫の木のざわめき。

そして、白い光の中にいるような、君の笑顔。

知らなかった。

言葉は、こんなにも力を持っている。

君がこうやって笑ってくれるなら、僕はまた、新たな言葉を紡ぐことができるだろう。

君に出会って、言葉の尊さを知った日。

僕は生まれて初めて、この世界を愛しいと思った。
 




                                  おわり