きみがため

エッセイで予期せぬ特別賞を貰ってから、一週間。

十一月に入ったばかりの、午後七時。

最寄り駅で下車せず、私はK大付属病院前で降り立った。

秋が深まるにつれ日没も早まり、すっかり闇に染まっている道路には、冷たい夜風が拭いていた。

紺色のブレザーを着た上半身を縮め、寒さをしのぎながら歩道を行く。

ここのところ、光の容態はずっと安定していたから、ここに来るのは久しぶりだ。

闇の中、デニスカフェは、今日も煌々としたオレンジ色の明かりを灯していた。

通行人の素振りをして、そっとウインドウ越しに中を覗くと、トレイを片手に店内を歩いている桜人が見えてドキッとした。

せわしなく動いている桜人には、どことなく鬼気迫るものがあった。

毎日同じ教室で何時間も過ごしているのに、こうして見ると、何の接点もない他人のようにすら見えてくる。

それが、たまらなく悲しかった。

ずっと、桜人と話す機会を待っていた。

だけど学校では、とことん避けられてしまう。

だからここに来てみたはいいものの、急に怖気づいてしまう。

彼のことが好きだからこそ、前にも増して怖かった。

他人のような目で見られること、無視されること、冷たい態度を取られること――すべてがつらい。