きみがため

そう言うと、光は「うん」と蚊の鳴くような声で答えて、グスンと洟を啜り上げた。
たまらない気持ちになる。

小さな体で、つらい病気に耐え続けてきた光。

どんなに不安だろう。

どんなに心細いだろう。

それでも光は優しい心を忘れていない。

大事な友達が、彼にそれを思い出せてくれた。

「今度、さっちゃんにお礼言わなきゃね」

そう言うと、光は洟を啜り上げながら、よりいっそう照れたように笑った。

「ああ、いたいた! 診察、終わっちゃった?」

すると、入り口の自動ドアから入ってきたお母さんが、私たちを見つけ、近づいてきた。

グレーのパンツスーツにトートバッグ、いつものスタイルだ。

よほど急いで来たのか、いつもきっちりと背中でまとめられている長い髪が、少し乱れている。

光が、花開いたように顔を輝かせた。

「お母さん、来てくれたの? 仕事は?」

「息子の診察に付き添わなきゃって言ったら、途中で同僚が残業代わってくれてね。急いで来たの。でも、もうお会計でしょ?」

「うん」

今日聞いた先生からの話を、お母さんに伝える。

聞き終えたお母さんは、「ありがとう、真菜。あなたがいてくれて、本当に良かった」とさっき私が光にしたみたいに頭を撫でた。

そんな子供を褒めるようなこと、十六にもなるとちょっと恥ずかしいけど、くすぐったさに似た喜びが込み上げる。

会計を済ませると、私たちは、家族三人で並んで駐車場のロータリーに出た。