きみがため

アイスにかぶりつけば、冷気が頭を涼やかにしてくれる。

作業もいったん終了したし、クヌギの枝葉越しに見える青空のように、気分も晴れやかだ。

「頑張ったあとのアイスは、最高においしいね」

笑顔を浮かべれば、夏葉は「うん、ほんとさいこう」とうれしそうに答えてくれた。

「真菜、変わったよね」

急にじっとりと見つめられ、そんなことを言われた。

「そうかな」

「うん、変わった。そんなふうに笑えるなんて、知らなかった。クラスのみんなとも打ち解けてるし」

「うん……。そうかも」

自分でも、それは実感している。桜人のおかげだ。

逃げるな。言うべきことは言え。

桜人にガツンと言われなかったら、美織と杏とは仲直りできてなかったし、わたしはいまだ、重苦しい学校生活を送っていたに違いない。

彼の存在が、怖いほど私を変えていく。

シャリ、シャリ。

私と夏葉がアイスを食べる音だけが、蝉の声に混ざり、閑散とした公園に鳴り響いた。

暑さのせいで、まだ食べ終わりそうにないのに、アイスはどんどん溶けていく。

「そういえば真菜、部活、いつまで続けるの?」

高二の秋頃から、本格的に受験勉強に入るため、部活をやめる人が続出する。

いつまで部活を続けるか?というのは、このところ、クラスの中でもちらほら話題に上がっていた。

「このまま、卒業まで続けるよ。文系だし、そもそもまったく大変じゃないし」

わずか四名の、ユーレイ部員でも許されるような部活だ。

「そっか。私も文系だけど、夏休み前にやめた」

「え、そうなの?」

夏葉は、美術部所属だったはず。

うん、とうなずくと「受験勉強に本腰入れることにしたんだ」と夏葉は笑った。

「へえ……。難しいところ、目指してるの?」

文系なら、高三まで続ける人も珍しくはない。それをあえて二年の夏前にやめてしまうということは、受験勉強が大変な大学を狙っているのだろう。

「医学部に入りたいの。子供の頃から、ずっと医者になりたいって思ってたから」
 
そう言って、夏葉は空を見上げる。

凛と背を伸ばした水鳥のようなその姿を、私はすごく、きれいだと思った。

「そうだったんだ。頑張ってね、応援してる。夏葉ならできるよ」
 
心からそう思った。すると夏葉は照れたように笑って、「真菜は?」と問い返してくる。

「真菜は、卒業後、どうするの?」

「私? 私は就職する」