愛は惜しみなく与う⑥

この廃墟に


水瀬の雄叫びが響いた


「……いくぞ」


振り返り泉は俺たちに声をかけた。
その振り返った顔を見て、泣きそうになった。

杏と同じだ

放っておけばいいのに

目に入ってしまったから

泉も、水瀬を救おうとしてしまうんだよな


別に殴って動けなくさせて放っておくこともできた。泉はキレていたから、そうなると思ってた。

でも泉は、杏がこの事件の真相を知りたがってるのも分かってるし、自分のする行動に後悔したくないんだろう。

だから全てを知ろうとしてる。


そして癖なんだよな


お前の言葉は、優しすぎるんだ


水瀬から1ミリも闘志を感じ取れなくなった。

そこにいるのは


ただ全てに後悔をし、それが遅すぎたと悟った、ただの男が蹲っていた



「……本当に、無茶をする」

声をかける志木さんに、腹の薬は効いてるからと尋ねる泉


ふわっと外の空気が入り込み、ここにきた時よりも、ぬるい風が吹いた



「もう、サトルがいるのは、すぐそこです」