愛は惜しみなく与う⑥

サトルの何を杏が突き動かすのか

こんなにも色々な人の人生を奪ってまで、何が欲しいというのか。



「薄々気づいてたんだろ?お前の妹が、死ぬ必要はなかったんじゃないかって。俺は死にたいと思ったことは一度も無い。だから分からないけど、一つでも希望があれば生きれるだろ。妹にとってはお前がその希望だったんじゃ無いのか?どうなったのか詳しく聞く気もないけど…

お前が強けりゃ、妹に、生きたいと思わせれたかもな。

そんな妹を見てたから、クソみたいな環境で、クソみたいな事件があって、それでもなお、強く生きようとする杏が、理解できず、そして気に食わなかったんだろ。


お前の負けだよ。妹を救えなかった時点で、お前は杏には勝てない。俺たちにもだ」



水瀬は死にたかったのかな。妹が死にたいと言って1人にしたくなくて、一緒に死のうとしてたのかな。

水瀬の気持ちは分からない


どうしてそんな選択肢しか選べなかったのか、知る由もない。


ただ
泉が語るその話を、人ごとのようには思えなくて、みんなが黙って泉の言葉に耳を傾けていた。