愛は惜しみなく与う⑥


初めて…
杏の意見を無視して、自分の意見を通した


「…サトルをそこまで慕う理由はなんだ?」

「お前はみたいな仲良しごっこしてる奴らには分からないさ!サトルが俺たちを救ってくれたから」


目が完璧におかしくなった水瀬は、ふらふらと立ち上がり、泉の前に立った。
俺たち、と言う言葉に少し引っ掛かった。

そして、聞こうと思っていた名前を、自ら口にした



「あの女をサトルに渡せば…これが上手くいけば、俺は……愛のところへ行ける」




それは、妹の代わりに死んでしまったかもしれないと判明した、女の名前だった。


水瀬愛


やっぱり…こいつと関係があったのか


「泉、少し待ってください。事件のことは…全て知ってから終わらせたいです」


志木さんは後ろから泉の肩にそっと触れる。泉もそうするべきだと思ったのか、数秒水瀬を睨みつけて下がった。

私が話します。


志木さんはそう言い、泉に蹴り飛ばされてフラフラの水瀬と距離を詰めた。

そして俺たちには理解のできない世界の話をした。