愛は惜しみなく与う⑥

「何をしてるんですか？」

「お、志木！いや、サトルのところに泉と行ったときの話をしててさ。泉、頬っぺた怪我してるやろ？それでなんか、ナイフ持った人への立ち向かい方を教えててん」


泉は怪我じゃない！と少し拗ねている。
もう血は止まったんでしょうけど、杏様に貼られた絆創膏だからか、まだ付けていますね。


「泉は怖くないのかよ！」

「…怖いよりも、イライラが勝った」


はぁ
お前の感覚はあてにならない。と朔さんは呟く

いや、武器相手に戦おうなんて対策するの杏様くらいですからね。
喧嘩は拳で充分です　

喧嘩は、ね


「朔さん、杏様の目をみてはいけません。手元だけ見て、少しでも動いた瞬間に間合いを詰めるんです」


フォークを握りしめる杏様と向き合っている朔さんに声をかける


「間合いを詰めれば武器を持つ者は、それを使おうとするので、再び間合いを取るか、小手先で武器を振るうことしか出来ません」


杏様がチラリと私を見て手を動かしたので、間合いを詰めて、フォークを持つ手首を捕らえる