愛は惜しみなく与う⑥

そして杏様の声も大きい。

杏様の声が聞こえたのか、信長と言う言葉でやっと理解した昴は、静かになった


「いえ、情けない姿で、嬢とは電話できませんと泣いてますので、元気になったら話してあげてください」

「あぁ、そう?わかったで。雄作さんに伝えてきてあげて!信長無事やって」

「ええ、わかりました」


ふぅ
違和感なく部屋から出れました。
ちなみに信長さんは、元気です。

杏様に会いたい会いたいと嘆いていたので、あれほど煩ければ、元気な証拠です。


部屋を出て、玄関の廊下まで行く
ここなら、会話も聞かれることはありません。


「すみません、お待たせしました」

『あぁ、もう1人か?杏はおらんやろな?』

「ええ、1人ですよ」

『杏は…元気そうか?』

「そうですね…1人でなければ、笑顔でいらっしゃいます」


そうか、ならいいんだ
昴はホッとしたようにそう言った。


「あなた達のこと言ってませんが、本当によかったですか?」

『勿論。かなりトラウマになってると思うぞ。また負けると思われても困るからなぁ。今は言わなくていい』


そういうものなんですかね…
確かにあの時の杏様は見てられませんでしたけど…