愛は惜しみなく与う⑥


『あの、今日のこと、杏はざっくりとしか話さなかったけど、最初から細かく話していいですか?』

「勿論です。わたしもそれが本題です」

『アポなしだったから、案の定サトルは家には居なかった』


そのまま泉は、そこであった事、見た事、聞いた事、感じた事

全て話してくれました。

サトルの違和感


それはずっと感じてきた事でした。


何かが欠けている


そんな風に思わせる言動。そして、表情。
あまりにも押し付けがましい自己主張。

分かってはいましたが




精神的肉体的虐待に遭っていた人の特徴。

愛情不足で育った人の特徴。





サトルには、それが当てはまってしまう。


あの愛情表現の歪み方といい、異常な執着…


『同情はしないけど、ちょっと、可哀想なやつなんだなって思った。いや、可哀想って言うのは失礼なのかも知れないけど……気持ちの伝え方も、人との距離感も、相手を思いやることも……

何も知らずに生きてきたんだなって。あの短い時間で分かった。

それがすごく、やるせない気持ちになった』