『あの、今日のこと、杏はざっくりとしか話さなかったけど、最初から細かく話していいですか?』
「勿論です。わたしもそれが本題です」
『アポなしだったから、案の定サトルは家には居なかった』
そのまま泉は、そこであった事、見た事、聞いた事、感じた事
全て話してくれました。
サトルの違和感
それはずっと感じてきた事でした。
何かが欠けている
そんな風に思わせる言動。そして、表情。
あまりにも押し付けがましい自己主張。
分かってはいましたが
精神的肉体的虐待に遭っていた人の特徴。
愛情不足で育った人の特徴。
サトルには、それが当てはまってしまう。
あの愛情表現の歪み方といい、異常な執着…
『同情はしないけど、ちょっと、可哀想なやつなんだなって思った。いや、可哀想って言うのは失礼なのかも知れないけど……気持ちの伝え方も、人との距離感も、相手を思いやることも……
何も知らずに生きてきたんだなって。あの短い時間で分かった。
それがすごく、やるせない気持ちになった』



