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傷口を押さえながらベッドから下りて、二つ置いてある椅子を指差す


「いつまでもここに寝転んでいると、本当に動けなくなりそうなんでね」


手当てが終わり身体を起こすものの、気合をいれても動ける自信がない。
どうしたものか
立ち上がる私に泉は駆け寄り、身体を支えた

細身に見えるのに、しっかりした身体ですね


「情けないです」


そう呟けば、痛そうだと泉は目を細めていう


「歩くのがこれじゃ、どこにも行けないですね。とりあえず、全部話してください。あの時俺に電話をしたのは…

今杏を守れるのは、俺だけだからでしょ?」


あの切羽詰まった状態で伝えようとしたのは、杏様を守ってくれと言うことでした。

彼に任せるしかないのかもしれません。
とても重荷になりそうで…

心苦しいんですが


「……落ち着いて聞いてくださいね。あまり興奮すると、私も傷口に悪いので。簡潔に分かった事を順番にお話しします」



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杏様と鈴は、仲は良かったです
昔は色々ありましたけど、杏様は杏様で自分の居場所を見つけて、鈴は鈴で、後継者として努力していました

鈴は年頃だったんでしょうね。
いろいろな事に興味を持ち、夜に家から抜け出す私と杏様に、ついてくる時がたまにありました。