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「冬馬様は御不在ですが…」

「いつ頃お戻りですか?」


まぁ、予想はしてたけど。おらんよな。なんかウロウロしてるイメージやもん。


「そうですね…奥様ならおられますので、奥様にお会いになられますか?」


「ええ、お願いしていいでしょうか」


「勿論ですとも。東堂家のお嬢様が冬馬様に会いに来られるなんて、嬉しいですわ。少しお待ちください」


入り口にいたメイドさんは、そう言って門の奥へ向かう。

ほらな


如月冬馬は、こうやって聞いてる分には、悪い奴じゃないように思える。

あの両親も…

すごく優しかったから


「杏」

「うん、分かってる。こういう事も含めて覚悟してきたから」


あたしは如月家を壊してしまう。
そういう葛藤もあった。言ってみれば罪のない人たちを巻き込む。

だからといって、もう引き返せない


サトルが如月家を継ぐのも、この家の為にならない筈やから


「どんな風に過ごしてるんだろうな」

「ん?」

「誰かを殺したかもしれない奴が、平然と生きてることが怖い。何を思って毎日を生きるんだろうって…思った」