愛は惜しみなく与う⑥

なにを思ってこんな事をしてるのか
理解はできひんと思うし怒りしか込み上げてこないと思う。

でも

そうやって逃げたらいつまでも分からずに、苦しむだけ

傷ついても悲しくなっても、知らなきゃいけなかった。
鈴のことも…諦めたらあかんかった。


『1人でどんどん強くなっていく貴方をみていると、とても複雑な気持ちになりますね』


ずっと黙っていた志木が口を開いた


『いつもの私なら、行くなって言います。気持ちはそう思ってる。でも私は多くを学びました。傷つけたくないと言う気持ちは、私のエゴでしかない。

一度も貴方の意見を聞かずに判断していました。それは謝らせてください』



……志木?



『行ってきなさい。納得できなくても傷ついてもいい。貴方がそうすべきだと思ったのなら、それが正しいです。もし…すごく傷ついて、頑張れなくなったら…その時はその時です。私たちがいます。

待ってます。貴方には沢山の味方がいる事を忘れないで。みんな、杏が大好きだから』


電話越しでもわかる。

志木はいま、優しい顔で笑ってる



「アホ。泣かすな」


志木がそんなこと言ってくれるなんて思ってなかった。