愛は惜しみなく与う⑥

そうか

それなら仕方ないな


『探します』

「いや、探さんでええよ。大丈夫。鈴は、必ず自分の誕生日までにこっちに来る。必ずな」


鈴ならそうすると思う

あたしを嫌いでも、恨んでてもいい。

これ以上、サトルと同じように、悪い事に手を染めないで欲しい。
守れなかったあたしの責任やから


「あたしが言う事じゃないけど、鈴が謝ってきたら、許してやって」


『勿論です。私がヘマしただけなので』


「あのな、今からな」


サトルのところへ行くよ


そう伝えると


電話の向こう側で志木が黙ってしまった。
怒るかな?
志木を不安にさせる事を、言ってるのは分かってるねんけどさ。



「もう、逃げたくない」



関東に行ったもの、現実から逃げたから。
最後に少し思い出が欲しいかった。
東堂で鈴のフリをすることを受け入れてしまっていた。

やのに


杏のままで生きたいって思ってる。
あたしは中途半端やった


本当に向き合わなあかんことは直ぐそこにあったのに。



「こうなった原因も知りたい。サトルを……サトルと喋りたい」