愛は惜しみなく与う⑥

「も、しもし」

あれ、あたしってこんな声やったっけ。
なんで志木相手に…電話出るだけで緊張せなあかんねん。
……分かってるよ


そんなんじゃない



『杏様、お待たせしました』



その声がどれだけ安心させてくれるか。
あたしは志木に頼りっぱなしやった。甘えてばっかりやった。
一人じゃ何もできひんことが分かった。



「志木がおらんから。急に音信不通になるからさ。あたし…泣いたわ。怖くて。」


『…はい』


「志木と連絡とれんくなって、母上から電話きて……その日から全然寝れへんかった」


『…はい』


「志木おらんから、あたし金髪のまま東堂帰っちゃったんやで?忘れてたんや。めっちゃ母上に怒られたんやで?」


『…はい』


「他にもな、志木おらんし…部屋も一人やし…誰もあたしのこと、杏って呼んでくれへんかったんやで?」


『 ……ッ 』


まだまだいっぱい言いたいことがある。少し離れててこんなんや。毎日毎日連絡するの面倒やなって思ってたけど。

志木とは毎日話さないと、あたしがダメやった




「志木?」

『…はい、杏様』