愛は惜しみなく与う⑥

それは本当に悲しくて
鈴を責めることもできなくて
ただ私は頭を抱えることしかできなかった


目の前の鈴も、被害者だ



杏様を騙したのは事実ですが、彼女はきっと…サトルの最初の被害者だったのかもしれません


鈴の話に反論したかった。
違うと言いたかった。
杏様をそんな風に言わないでほしいと。

でも鈴はきっと、聞く耳を持たないでしょう。


一種の催眠術のようなもなのか、サトルの言葉で鈴の行動や心は操られている



鈴がしたことは許されることではまりません。ただ本当に同情します

とても可哀想で、掛ける言葉が見つからなかった。



「ねぇ」


鈴が顔を上げる
後ろの線路で踏切の音がする。

カーン カーン

カーン カーン
  


「お姉ちゃんは、サトルと結婚するのかな」




…は?

寂しそうに呟いた鈴の言葉に動揺する

どういうことでしょうか
サトルと結婚?どうしてそうなる


「どうして結婚になるんです。サトルが杏様に執着してるだけでしょう」


「え?お姉ちゃんってさ、あたしのフリして東堂にいるんでしょ?お母様の精神安定剤になるために」