愛は惜しみなく与う⑥


「それにしても、お前が杏様杏様言ってるの、いまだに違和感あるわ」


昴さんは敦子が静かになると、ハッとして立ち上がり、飲み物くらい出せばよかったなと、お茶の準備をしてくれた。


「俺らからしたら、杏様杏様うるさいくらいにずっと言ってんぞ」


そう。
志木さんが杏にタメ口だったなんて、想像もつかない。


「そうですかね?まぁ半ば強制的にタメ口を使えと言われて、練習したんで…割と杏様に対して怒ってる時とかはタメ口になりますよ?」


普通にそう答えるけど、タメ口使ってるところなんて見た事ないけどなぁ

綺麗な主従関係なんだと思ってた。


「杏に話す時だけ、一人称が俺だったから、今思えば違和感だったな」


ケタケタと笑いながら、小さなちゃぶ台に8個コップが並んだ。


「一人暮らしなのに、コップいっぱいあるんだねー?」


敦子は全部同じ種類のコップをみて、へんなのーと首を傾げている。


「女の子と達と合コンするために、食器とか揃えたんだよ」

「は?なにそれキモい。家で合コンとかありえないわよ」


キモい。さらにもう一度キモいと美奈子は言い、昴の背中を叩く