愛は惜しみなく与う⑥


「さっそくなんやけど、ええかな」


敦子は鞄をガサゴソと漁り、一冊のノートを取り出した

それは…久しぶりに見た懐かしいノート


「まだそれを持ってたんですか?」

「うん。思い出詰まってるからさ。8冊目やで?これ」


ノートには『薔薇日記』と書かれています。これは私と杏様が始めた、交換日記です。

中学1年生から高校を卒業するあの日まで…絶やさず書いた日記



「これは…日記なの?」

慧さんが覗き込む
日記なんですかね。なんとも言えないようなものですが。



「杏と志木がさ、交換日記してるんやで?ビックせん?こいつら2人で何してんねんって思ったもんな」


当時は意味不明だったと語る昴。

確かに…今思えば、こんなに近くにいるのに、交換日記だなんて…意味がわからないですね。

でもこれは私達にとって大切なものでした。


東堂の娘ではなく、ただの1人の女の子として杏様が外に出た時から…
本音や我儘など、お互いに伝えづらくなった時がありました


執事と主人の関係で
外では仲の良い幼馴染み

ある意味外での私たちは演じていました。