「さっそくなんやけど、ええかな」
敦子は鞄をガサゴソと漁り、一冊のノートを取り出した
それは…久しぶりに見た懐かしいノート
「まだそれを持ってたんですか?」
「うん。思い出詰まってるからさ。8冊目やで?これ」
ノートには『薔薇日記』と書かれています。これは私と杏様が始めた、交換日記です。
中学1年生から高校を卒業するあの日まで…絶やさず書いた日記
「これは…日記なの?」
慧さんが覗き込む
日記なんですかね。なんとも言えないようなものですが。
「杏と志木がさ、交換日記してるんやで?ビックせん?こいつら2人で何してんねんって思ったもんな」
当時は意味不明だったと語る昴。
確かに…今思えば、こんなに近くにいるのに、交換日記だなんて…意味がわからないですね。
でもこれは私達にとって大切なものでした。
東堂の娘ではなく、ただの1人の女の子として杏様が外に出た時から…
本音や我儘など、お互いに伝えづらくなった時がありました
執事と主人の関係で
外では仲の良い幼馴染み
ある意味外での私たちは演じていました。



