愛は惜しみなく与う⑥

「そーそー。ほんと、何もかもうまくいくはずだったんだ。何もかも捨ててサトルの元へ行ったのにさ」


鈴は立ち止まり私の方を振り返り言った



「サトルに捨てられたんだ、あたし」



目は潤み、眉はさがり
今にも泣きそうな顔の鈴がそこに居た

慰めそうになる


でも違うんですよ

そこじゃないんです


「貴方も辛かったのかもしれません。でもそうなる前のこと…私は知りたいんです。どうして…どうしてあんな事になったんですか」


もう、考えてもわからない
目の前にいるのは、よく知ってる鈴です。少しやさぐれた感じはしますが、半年前までとあまり変わらない

でも


あの事件は本当にあったんです