知ってたよ。元から親父が酷い人間だってことくらい。
ワイン瓶で頭叩かれて、足粉々にされて、嫌というほど思い知ったよ。
それでも、何処かで思っていたんだ。楓は本当に死んだのか。親父が俺を殺さなかったのは、俺が商品だからだ。じゃあ、商品でない人間の命なら簡単に切り捨てられるのだろうか。
それなら、母さんはどうしてそんな残酷な人間と結婚したのかって。
でも、まさか真実がこんなだなんて思ってもみなかった。
楓が生きてたのは嬉しい。初恋の子だし、死んでなくてよかったと思う。
でもこんなの望んでない。俺を服従させるためだけに死体の偽装までしたなんて言われて、はいそうですかなんて言えるわけない。
「……親父に会ってくる」
「ミカ、それはやめろ!何されるかわかったもんじゃないぞ」
仁が俺の肩を叩いて叫ぶ。
「……んなことわかってるよ!それでも、俺が納得しないんだよ!親父に説明してもらわないと!」
俺は声をはりあげて叫んだ。
「分かった。ならみんなで行くぞ」
何も言わず、俺は頷いた。



