一匹狼くん、 拾いました。弐


 知ってたよ。元から親父が酷い人間だってことくらい。

 ワイン瓶で頭叩かれて、足粉々にされて、嫌というほど思い知ったよ。


 それでも、何処かで思っていたんだ。楓は本当に死んだのか。親父が俺を殺さなかったのは、俺が商品だからだ。じゃあ、商品でない人間の命なら簡単に切り捨てられるのだろうか。

 それなら、母さんはどうしてそんな残酷な人間と結婚したのかって。

 でも、まさか真実がこんなだなんて思ってもみなかった。

 楓が生きてたのは嬉しい。初恋の子だし、死んでなくてよかったと思う。

 でもこんなの望んでない。俺を服従させるためだけに死体の偽装までしたなんて言われて、はいそうですかなんて言えるわけない。

「……親父に会ってくる」

「ミカ、それはやめろ!何されるかわかったもんじゃないぞ」

 仁が俺の肩を叩いて叫ぶ。

「……んなことわかってるよ!それでも、俺が納得しないんだよ!親父に説明してもらわないと!」

 俺は声をはりあげて叫んだ。

「分かった。ならみんなで行くぞ」

 何も言わず、俺は頷いた。