ソファに座ってテレビをつけたら、ミステリードラマがやっていた。

 流血描写をみたくなくて、俺は慌ててチャンネルを変えた。血を見ると虐待のことを思い出してしまう。

 ……他には何がやってるんだろう。チャンネルを回すと、バラエティクイズ番組、あるいは恋愛ドラマなど、色々なものがやっていた。

 何を見るのが一番面白いのか全然わからない。……家族で食事していた時はいつもテレビがついていたけど、虐待されてたせいで全然ゆっくり見れなかったし。

「何見るか決まんねぇの? ミカって、そういうとこ結構子供だよなー」

 ミルクが沸騰するのを待っている仁は、ソファに座っている俺の頭をフードの上から撫でた。

「……テレビ穏やかに見れたことなんてねぇし」

「そっか。バラエティとかは? みんな結構すきじゃん」

「……まぁ、そうだな」
 
 バラエティのチャンネルにすると、出演する役者たちがみんな笑っているのが目に入った。

 思わず俺はテレビを消す。

「ミカ?」

「……嫉妬した。幸せそうすぎて」

 
「……そっか。わかるぞそれ。ミカ、それ見てみ」

 仁はテレビのそばに置かれた映画のDVDが入つた棚を顎で示す。

「これは……」

 棚を見て、俺は声を上げる。ハッピーエンドの映画が一つもない。あるのはミステリーかホラーだけだ。

 台所に戻った仁が、俺が声を上げたのに気づいて言う。

「中一くらいまでは恋愛ものとか、そういう王道のハッピーエンドも普通に好きだったけど、今は全然見なくなったなー。やっぱ見たらどうしても自分の環境と比べちまうし」