一匹狼くん、 拾いました。弐

「仁?」

 教室のある、階段の方へ仁は行ってしまう。病院一緒に行ってくれるって言ったのに。慌てて後を追う。

「俊……鈴音は」

 階段に座っていた仁の隣に、俺は腰をおろす。

「結賀と伊織が宥めてると思う。仁、もしかしてあの子は」

「知らねぇよ、俺が母親に何されたかも、俺がなんで一人暮らししてるかも」

「誰も教えないのか」

「教えないし、本人も知ろうとしなかった。でも今更、気にしてる」

 そういう子だからこそ、余計頭に来るのかもしれない。

「何もかも遅いんだよ」

 妹は悪くないのかもしれない。いつの間にか嫌われていたって、思っているのかも。それでも面談に行きたがってないなんて、言うべきじゃない。無神経だ。


「もういなくなったか」

 階段から仁は校門を見る。ふわふわと赤いリボンのついたツインテールが揺れている。

「帰る気、ないんじゃね」

「え、話さないとか……? 諦めろよ」

 もういいやって帰る子なら逆によかったのかもしれない。それなら、仁に期待してない子だから。

「家族でいたいんだろ、仁と」

「求めてねぇ、今更四人暮らしとかしねぇし」

 仁を見て、俺は頷く。

「しなくていい、仁が納得する方法で向き合えば」

「逃げ続けたらダメか」

 俺は黙って下を向く。

 仁は結局、夏休みの間は母親に会いに行かなかった。行こうって約束したのに。

 仁が幸せなればいい、俺は。でもこのままでなれるのかな。

「……俺は義母さんに会いたいから、まだ連絡取ってる。仁は? 妹はもういらない?」

「いらねぇよ。でもいつか、俺の方が幸せだ。ざまぁみろ!って言ってやりたい」

 愛されてる子より幸せだったか。確かに、俺も露麻に言いたい。