一匹狼くん、 拾いました。弐

「もーみんなで俊でいいじゃん?」

 伊織が笑いながら言ってくれる。確かに。

「あ、伊織、鈴音のこと本当にありがとう」

仁は勢いよく頭を下げる。

「いえいえー、楽しかったよ? 女の子が泊まるの新鮮で。良い子だねぇ」

 うんうんと伊織は頷く。バイクを停めている駐車場で、仁は立ち止まってしまう。

「クソガキ、地雷系で甘ったるい匂いの。髪は無駄に高い位置で結んでて、笑うことしかできない」

 落として上げてないか?

「鈴音って?」

「あ、仁の妹な。会いに来たって言っただろ」

 首を傾げている俺を見て、結賀は補足してくれる。

「見た目は派手だけど、料理も挨拶もできるいい子だったよー」

「っ、もうやめろ。聞きたくない」

 仁がバイクに乗ってしまう。慌てて後ろに乗ってヘルメットをもらう。

「怒ってんの?」

「……嫌いなんだよ、あいつ。何もかも奪うから」

 小声で聞くと、耳元で教えてくれる。何もかも。俺にとっての露麻みたいなもんか。

「仁、病院付き合ってもらえて嬉しい。ありがと」

「ん。終わったら母さんと買い物すんの?」

「うん。夕方スーパーで待ち合わせ」

 二日か三日に一回、母さんは必ずスーパーに行く。俺はいつもじゃないけど、できる範囲でそれに付き合っている。

 まだ人に顔を見られるのは好きじゃないけど、外にいることは慣れた。

 結賀のバイクが発車して、慌てて仁と廉は後を追う。前にあるそのバイクから伊織が後ろに手を振っている。

「仁あれ、モヤモヤする?」

 思い切って聞いてみる。

「少し。でもあと数ヶ月だけだし」

 笑いながら、仁はさらにバイクを加速させる。