一匹狼くん、 拾いました。弐

 席に案内されて注文をしたら十分も経たないうちに料理が運ばれてきた。

 白米の上には様々な刺身が乗っかっていた。真ん中に温泉卵があって、それを囲むようにサーモンやエビやマグロやしらすが置かれている。

 刺身はそれぞれ三つずつあるし、しらすも数え切れないくらい沢山ある。五十匹くらいはいるのかな。

「灰色のしらすと白いしらすがあるけど、何か違うの?」

「灰色の方が生しらすで、白い方が釜揚げしらすだな」

 仁が指をさしながら教えてくれた。

 丼の上に醤油をかけてから卵を割ってしらすと一緒に食べた。

「ん、美味い」

 生の方は水分が多くて、口に入れるとすぐにとろけた。

 釜揚げは熱くて、ふっくらしていた。岳斗が家に来ていた時に、母さんが夜ご飯に用意してくれたしらすと似た食感がする。

 マグロもサーモンも美味しくて、するするとお腹の中に入った。

「クク。ミカ、食べんの早い。もうちょっとゆっくり食え? あんまり急ぐと喉に詰まるから」

「あ、うん」

 結賀が俺を見て笑った。恥ずかしくて下を向きながら食べていたら、仁に肩を叩かれた。

 横を向いたら、仁がネギトロを口の中に入れてくれた。

「ありあと」

「食べながら言わなくていい。本当に可愛いな、ミカは」

 頭を撫でられた。

 俺の頭から手を離して、仁はメニューをとった。

「かき氷も頼むか。何がいい?」

 かき氷は宇治金時と黒みつきなこといちごみるくがあった。

「いちご食べたい」

「おけ。すみません注文いいですか?」

 テーブルのわきを歩いていた店員に結賀は声をかけた。

「はい、大丈夫です」

「かき氷のいちごみるくを二つと宇治金時を一つと、緋也は何がいい?」


 え、あれ? 結賀、仁に何がいいか聞いてないよな?

「僕はきなこかな」

「じゃああと黒蜜きなこをお願いします」

「かしこまりました。ありがとうございます」

 俺達にお辞儀をして、店員は去っていった。

「確認くらいしろよ」

「別にいいだろ。好きなやつの好みなんて、聞かなくてもわかるんだから」

 仁は恥ずかしそうに頭をかいた。耳が真っ赤だ。