もう一個の洞窟は、入口を入ってすぐのところに灯篭があった。
前に進む度に、道の右端と左端にある灯篭が見えるから、多分全部で二十個くらいある。
一つ一つに花の絵が描かれている。……今日は初めて見るものが多いな。
奥に進むと、紫色の龍の像があった。
二メートル以上あるでかいやつだ。上から見下ろされている気分になる。
「アオーン!」
「うわ!?」
結賀が手を叩くと、龍が鳴いた。厳かな雰囲気があったし、結構大きな音だったから、つい声を上げてしまった。
狼の遠吠えを聞いている気分になった。
「はは。ミカかわいい」
俺の背中を撫でて、結賀は笑った。
「なんでもちゃんと説明しろ。でないと、ミカがビビるだろうが」
仁が結賀の頭を小突いた。
「へいへい。ミカ、あの龍は手を叩いたら鳴くんだよ」
「そうなの?」
「そ。やってみ?」
「わっ?」
恐る恐る手を叩いたら、本当に鳴いた。
……すごい。こういうのって、どういう仕組みなんだろう。
「じゃあ一通り回ったし、しらす丼でも食いにいくかぁ」
結賀のそんな言葉に頷いて、俺達は洞窟を出た。
☆☆
べんてん丸にまたのって江ノ島に戻って、しらす丼のお店を探しに行った。お昼頃だから飲食店はどこもかしこも混んでいた。それぞれのお店に少なくとも十人以上は人が並んでいる。
しらす丼を宣伝しているお店は二つあって、一つは一階が売店で二階で食事ができるところで、もう一つはガラス張りの扉のすぐそばにカウンターがあるところだった。カウンターの隣には階段があって、その周りにはいくつかのテーブル席があった。
「ミカ、マグロやサーモンやおくらがしらすと一緒にのってるのと、しらすだけのならどっちが食べたい?」
「いっぱいのってるの」
「おっけー。じゃあこっちな」
仁が俺の手を引いて、ガラス張りの扉の前に並んでいる人達の後ろに並んだ。
俺の後ろに並んだ結賀や緋也と一緒に店員から手渡されたメニューを眺めがら席が空くのを待った。



