一匹狼くん、 拾いました。弐


 洞窟の入口に着くと、俺達はすぐに受付に並んで金を払った。

 インド人にアメリカ人など、洞窟には十数人以上の観光客がいた。

 天井に照明があるから、中は意外と明るい。

 洞窟の壁には、江ノ島に伝わっている龍神伝説や江ノ島にいる鳥について書かれているパネルが貼ってあった。

 龍神伝説というのは、簡単に言うと北条時政が満月の夜に女の人に化けた龍神に会った話らしい。

「……神様って本当にいるのかなぁ」

「いるだろ。俺達とミカを会わせたのは神様だから」

 俺の発言に、結賀はするどく突っ込む。

「言えてる」

 仁は結賀に迷いなく賛同した。

「ふ。君らのそういうところ、可愛げあっていいよね。まぁ僕も、君らの考えを否定するつもりはないけど」

 俺の肩に腕をのっけて、緋也は笑った。

「可愛い?? 仁はわかるけど、俺は全然だろ」

「アホ、逆」

「へぇ?」

 結賀が手を握ると、仁の顔はりんごみたいに赤く染った。

「え?」

 パネルがある場所を通り過ぎると、よく分からない光景があった。

 駅の係員がいる場所よりも小さい、人が一人入れそうなスペースの所に女性がいて、その前に何十人もの人が並んでいる。

 スペースは基本的に透明な壁でできていたけれど、女性のちょうど腰の前あたりのところには、茶色い長方形の板があった。板のそばは空洞になっていて、彼女はそこから顔と身体を出していた。

 受付のような場所なのか?

 人々は手のひらサイズのキャンドルが置かれたお皿を彼女から渡されると、順々にそこから離れていった。

 皿には持ち手がついていた。

「結賀、あれ貰っていいの?」

「もちろん。無料配布。歩くルートが決まってて、キャンドルをくれる場所がスタート地点とゴール地点なんだよ。だから返せば問題ない」

 あぁ。

「迷路みたいもん?」

「いやもっと単純。行き先は2箇所しかないから。とりあえず貰うか」

「うん。欲しい……あ」

 そこまで言って、手に結合跡があることを思い出した。絶対気まずい顔される気がする。

「ミカ、大丈夫。見て」

 仁は俺を見てから、もう一度渡されている場所を見るように言った。

 女性はキャンドルを直接渡してはいなかった。彼女がしているのは、火をつけたそれの持ち手を人々の方に向けて、机の上に置くことだけだ。


 人々が彼女に礼を言ってから持ち手を掴んでいたから、つい手渡ししているのかと考えてしまった。