一匹狼くん、 拾いました。弐


「段差があるので気をつけて降りてください」

「「「「ありがとうございました」」」」

 優しく声をかけてくれる船長の人に礼を言って、俺達は船を降りた。

 降りた先には海食台地があった。

「あ、蟹だ!」

 真っ黒な蟹が台地の上を歩いていた。

「ふ、本当だな。ミカ、写真撮っとけよ。忘れないように」

「うん、撮る」

 仁の言葉に頷いて、俺は写真を撮った。

「ね、みんなの靴の写真撮ろうよ」

 緋也が言う。靴? なんで?

「あーそういうのあるな確かに! それなら足と手両方やってとるか!」

「え、何すんの?」

「んと、ミカの他にも自分の顔見られんの嫌な人って結構多くて。そういう人は写真撮る時、お互いの指をくっつけた写真や靴の写真を撮るんだよ」

 話についていけなかった俺に、結賀は優しく教えてくれた。

「こういうの。これは靴が四種類映ってるから四人」

 スマフォを起動して、仁は俺に写真を見せてくれた。スニーカーが三つとサンダルが一つ映っている。四角を作るように立って撮ったものみたいで、真ん中じゃなくて四隅にそれは映っていた。

 そっか、写真って無理に顔を映さなくてもいいんだ。そんなの初めて知った。

「あーその写真懐かしい! 一年前くらいだっけ?」

 仁のスマフォを見て、結賀は声を上げた。

「ああ。まだミカと会ってない頃のだな」

「あ、これ……華龍の幹部のみんなの靴?」

「そうそう。毎年四人で撮ってたけど、今年からはずっと五人だな」

 俺が聞くと、結賀はとんでもないことを言ってのけた。

「え、俺華龍入ってないけど……」

「知ってる。けどミカとも撮りたいから撮る。ミカは撮りたくねぇの?」

「と、撮りたい!」

 慌てて首を振って、結賀の意見に賛同する。撮りたくないわけがない。

「素直でよろしい。じゃ、ここでも華龍の倉庫でも撮ろうな」

「う、うん」

 俺が頷くと結賀は大丈夫と言って、肩に手を置いてくれた。