一匹狼くん、 拾いました。弐


「ふ。いちいちおおげさ。しんどくなったらすぐ言えよ? これでもまだ厚着なんだから」

 俺を見て、結賀は笑った。

「うん、ありがとう!」

 元気よく俺は頷いた。

 べんてん丸のチケットは一人四百円だった。

 船の隣にあった受付で会計をしたら、俺達はチケットを貰って船に乗った。

 船は外席も中席も水色だった。船長の人は外席の船沿いの中央に置かれているクーラーボックスに座っていた。

 船の中の通路をとおりすぎて、外にあった席に四人で横に並んで座る。

「風が気持ちいいな」

 目を閉じて、結賀は口角を上げた。

 船なんて初めてだから俺は結賀みたいに落ち着くことなんてできなくて、つい当たりを見回した。

 ん?

 海の上にのりものがあって、それにカップルが股がっているのが見えた。バイクのようなハンドルがあって、スピードが早くて動く度に水しぶきがてきているし、跨っているから船でないのはわかるのだけれど、全然何かわからない。

「あれ何?」

「ジェットスキー。あるのは知ってたけど、こんなに間近で見たのは俺も初めてだな」

 指をさしたら失礼だと思って目線と首だけを動かして示したら、仁がすぐに教えてくれた。

「俺も初めて。楽しそうだな」

 ジェットスキーを漕いでいる人達を見て、結賀は歯を出して笑った。

「うん。でも少し怖そう」

 船からだと乗っている人の顔がよく見えないから、かなりスピードが出ている気がした。

「やったら案外楽しいと思うけどね」

「え、緋也やったことあんの?」

 結賀はすぐさま反応した。

「うん。先週くらいに免許とったよ」

「めっちゃ最近じゃん! なんで?」

「……父さんと母さんの肩身のジェットスキーが別荘にあったから」

 頬をかきながら、緋也は結賀の問いに答えた。