一匹狼くん、 拾いました。弐


「ミカと仁が働くなら、俺も働こうかなぁ」

「僕も興味ある」

 結賀と緋也が言う。四人で働くのか? 

「緋也はまだしも、結賀はおじさんのことどうすんだよ。働いている間も伊織に任せるのか?」

「……いや、やっぱ俺働かない」

 仁の言葉を聞いて、結賀は勢いよく首を振った。

「結賀、お父さんどこか悪いの?」

「軽度の鬱病なんだよ」

 緋也の問いに、結賀は顔を伏せて答えた。

「そっか。今は大丈夫なの?」

「あぁ、今はな。でも今日は一応早めに帰るつもり」

「そっか。そしたら、観光の後魁斗に頼んで、車で家まで送ろうか?」

「え、いいのか?」

「もちろん」

 結賀の問いに、緋也はしっかりと頷いた。

「マジ助かる、ありがとう!」

「ううん」

 首を振って緋也は頷いた。

「二人のことも送るよ」

「「ありがとう」」

 仁と俺の声が被った。

「ミカ、俺のところ泊まる? ……それとも、結賀の方がいい?」

「三人の方が賑やかそうだから、結賀のところかな。いい? 結賀」

「もちろん」

「そしたらおじさんの面倒も三人で見るか」

「うん。……仁は、結賀のお父さんのことは嫌いじゃない?」

 大人が嫌いな割に、結賀のお父さんのことは気にかけているから、そうなのかと思った。

「え、あーそうだな。あぁ、ミカの本当の両親と結賀のお父さんのことは嫌いじゃない」

 俺の言葉に仁はしっかりと頷いた。俺の両親のこともそう言ってくれるのか。嬉しくて、心が暖かくなった。


「俺の父さんは仁にとっても父親みたいなもんだしな」

「え、そうなのか?」

 どういうことだろう?

「……まぁ。俺、一人暮らしする前に家出してたことあって。その時は結賀の家に居候してたから」

 そっか。それで、介護の手伝いもしているのか。

「その割にパティシエになりたいこと父さんに話してなかったけどな」

「……ちゃんと目指したら話す」

「……早く目指せるといいな」

 仁を見つめて、結賀は作り笑いをした。