「ミカーこっち向いて」

 横から聞こえた声に頷いて、顔を動かす。仁がスマフォのカメラを俺に向けていた。

「え? なんで写真?」

「ミカが生まれて初めてお小遣いを貰ったのを記念して、撮っておきたいと思って」

 笑いながら仁は言う。写真撮るようなことか?

「恥ずかしい」

「んーじゃあ立花、撮ってくんない? 俺達四人のこと」

 俺の顔を見てから、結賀は言う。四人ってのは俺と結賀と仁と緋也のことだ。

「ん、いいよー。仁くん?ので撮っていいの?」

「……あぁ」

 仁って女嫌いだけど、楓にスマフォ渡して平気なのか? さすがにそれくらいは良いのかな。

 素っ気なく応じて、仁はスマフォを渡した。

「じゃ、行くよー。俊平、お金ちゃんとカメラに向けてね。はい、チーズ!」

 楓は直ぐに写真を撮ってくれた。

「楓と俊平でも撮ったら?」

 楓が仁にスマフォを渡したところで、母さんが気を利かせて、そんなことを言ってくる。

「え、あ……いい? 楓」

「もちろん!!」

 二つ返事で楓は応じてくれた。

 身体を寄せあってポーズを撮ったら昔に戻ったような感覚がして、涙が溢れた。

 ……どうしよう。俺、今でもめちゃくちゃ楓のこと好きだ。

 思い出してくれる確率なんて、きっと全然高くないのに。