一匹狼くん、 拾いました。弐


「俊平、ご飯食べないの?」

 母さんがリビングを出て、俺の部屋の前の廊下に来る。

「百合、今日の朝食は、俊平の分は処分でいい」

 父さんが母さんに言う。……まぁそうなるよな、さっきの話の流れからして。

「え、あなたまさか、朝食も食べさせない気?」

「ああ。躾だからな」

「……俺、もう学校行く」

 そう言うと、俺は手に持っていた鞄を肩にかけて、階段を降りようとした。

「俊平、ご飯、本当にいらないの?」

 いらないわけないだろ。でも……。

「父さんがそばにいたらどうせ食べられないからいい」

 下を向いてそう言うと、俺は階段を降りて、玄関に行った。

「俊平、気をつけてね」

 スニーカーを履いていたら、母さんが玄関に来て、俺に声をかけてきた。

 学校に行くのを心配する前に、父さんが俺の朝食を抜かない気になるよう取り計らって欲しいんだけど。

 まぁそんなことしたら母さんが父さんに暴力を振るわれるのは明白だし、母さんがそうしないのは当たり前なんだけど、それでも、助けて欲しいと思う俺は、わがままなんだろうか。

「はぁ……」

 環境に疲れて、ため息が漏れる。

 俺は何も言わず、家を出た。

 学校に着くと、俺は自分のクラスの下駄箱でスニーカーを脱いで、上履きに履き替えた。

 下駄箱の自分の出席番号が書かれたとこにスニーカーを入れていたら、お腹がグゥっと音を立てた。

 マズい。

 どうしよう。夜まで耐えてなきゃいけないのに、これじゃあ絶対無理だ。

 はぁ。

 授業サボろうかな。こんな状態じゃ、先生の話なんてろくに聞けるわけないし。

 下駄箱のすぐそばにあった階段を上がって、屋上に向かう。

 屋上のドアを開けて中に入ると、髪の毛が風で揺れた。

 床に腰を下ろして、ドアのそばの壁に寄りかかる。