「別に、泣いたことを告げ口する気はないです」
「……父さんが聞いてきても絶対に言わないって言えるか?」
露麻は何も言わず、顔を伏せた。
「……俺風呂入るから」
そう言うと、俺は露麻の顔を見もしないで、部屋を出た。
はぁ。
「……っ」
部屋を出た瞬間、堪えていた涙が一気に溢れ出した。
着替えても下半身が未だに濡れてて、違和感がすごくて、歩くのも嫌になる。
ここは地獄なんじゃないかと、自分は産まれる場所を間違えたんじゃないかと思った。
「……間違えたんだろうな、本当に」
はぁ。
風呂行くか。
風呂から出たら、六時半になっていた。
朝ご飯は食べてもいいんだよな?
さすがに昨日の夜の分と朝両方抜かれる、なんてことないよな?
脱衣所で服を着ながら、そんなことを考える。
「俊平」
着替えてドライヤーをしてからリビングに行くと、母さんに声をかけられた。
「母さん」
「良かった。心配したのよ」
俺を抱きしめて、母さんは笑う。
何が良かったんだろうか。
父親の前で服を脱がされて、心がボロボロになるまで身体を触られたけど、怪我はしなかったから良かった、か?
俺は何も言わず、母さんから離れた。



