一匹狼くん、 拾いました。弐


「別に、泣いたことを告げ口する気はないです」

「……父さんが聞いてきても絶対に言わないって言えるか?」

 露麻は何も言わず、顔を伏せた。

「……俺風呂入るから」

 そう言うと、俺は露麻の顔を見もしないで、部屋を出た。

 はぁ。

「……っ」

 部屋を出た瞬間、堪えていた涙が一気に溢れ出した。

 着替えても下半身が未だに濡れてて、違和感がすごくて、歩くのも嫌になる。

 ここは地獄なんじゃないかと、自分は産まれる場所を間違えたんじゃないかと思った。

「……間違えたんだろうな、本当に」

 はぁ。

 風呂行くか。

 風呂から出たら、六時半になっていた。

 朝ご飯は食べてもいいんだよな?

 さすがに昨日の夜の分と朝両方抜かれる、なんてことないよな?

 脱衣所で服を着ながら、そんなことを考える。

「俊平」

 着替えてドライヤーをしてからリビングに行くと、母さんに声をかけられた。

「母さん」

「良かった。心配したのよ」

 俺を抱きしめて、母さんは笑う。

 何が良かったんだろうか。

 父親の前で服を脱がされて、心がボロボロになるまで身体を触られたけど、怪我はしなかったから良かった、か?

 俺は何も言わず、母さんから離れた。