「俊平様、ドアを開けてください」
やばい。露麻だ。
「……露麻、待って。俺今、服……」
「替えの下着とスボンを持ってきました。腕と顔だけ出してくれればいいので、ドアを開けてください」
床にあったシャツを羽織って、数センチメートルだけドアをあける。
「どうぞ」
露麻が俺の体を見ないように、ドアから目線を外して、俺に服を差し出す。
「ん」
服を受け取って、着替えてからドアを全開に開ける。
「入れよ。部屋、片付けるんだろ」
「はい。俊平様の腕を結ぶのに使った紐と、紙と筆を処分するように言われました」
片付けをしに行くついでに、服を持ってきたのか。
「だと思った」
「……俊平様、あの、昨日のは私の意思じゃないです。私もやりたかくなかったです、あんなこと」
俺の足についてる筆の毛をはらいながら、露麻はいう。
「だったらするなよ……クソ野郎」
「すみません。旦那様がすごく乗り気だったので、逆らったら、私も暴力を振るわれると思って」
「父さんがお前に暴力を振るうことなんてないだろ」
だって露麻は、不良品の俺と違って、父さんのお気に入りなんだから。
「絶対にない、とは言えないので」
まぁ、あの父さんならやりかねないか。
「……あっそ」
俺は露麻に濡れた服をわたした。



