一匹狼くん、 拾いました。弐



 ……俺に人権ってないんだろうか。俺は父親の愛玩動物かなんかなのか。

 いや、愛は向けられてないな……。父さんが俺に向けられているのは愛じゃなくて、支配欲だ。

 涙が頬を伝う。

 別に、父さんが俺をホテルに連れ込んだ訳じゃない。ただ服を脱がされて、紙を腕と腹に貼り付けられて、筆で、肌を触られただけだ。それでも、俺の心を傷つけるにはあまりに十分だった。

 考えるのもおぞましい。考えたくもない。実の父親に、下着とズボンが自分の汗と体液でぐちゃぐちゃになるまで、体を触られたなんて。

 もうやだ。なんでこんな目に。実の親と、その執事に、あんなことされて感じて甲高い声上げたなんて、思い出すだけで体が震える。

「うっ、あ……きも……もうやだ」

 濡れてるのがいやでズボンを脱いだら、筆の毛が、ズボンと下着にまとわりついていた。

 この調子だと、多分体の内側にも毛がついている。……なんで。

 ズボンをぎゅうっと握りしめる。

 クレープ食べただけでこんなことするとか、正気じゃないにもほどがある。

 ……しかも、父さん、さっき昨日の夜ご飯、俺に渡してくんなかったし。

 食べる前に気絶したんだから、俺の分が残っているハズなのに。

 「クレープなんか食べたやつに飯はやらん!」とでも思っているのだろうか。

 体を散々いじられて、昨日夜ご飯の分の飯まで抜かれたら、クレープの分なんか比較にならないくらい体重が落ちる気がすんだけど。

 ……ああ、落とすのが狙いなのか。

 ただでさえ高一の男子の平均体重より十キロは下なのに、そこから更に体重を落とせってか?

「これ以上痩せたら拒食症みたいな体型になりそうなんだけど」と、父さんに文句を言ってやりたくなった。

 ……こんな文句、父さんに言っても、だからどうした? としか返ってこないだろうな。