一匹狼くん、 拾いました。弐


「……あいつは、そういうことをしないと気が済まないんすよ。裏切られるのにも怒られるのにも人一倍脅えてて、裏切られないために、怒られないために、何もかも人より完璧にやろうとする。勉強も、運動も、料理も、何もかも」


 ……もしかして、勉強というのは、仁がテストでいつも学年一位をとっていることをいっているのだろうか。

 仁は、華龍の中ではダントツで頭が良くて、テストではいつも学年一位をとっている。俺はまさかその理由に、親のことが関係しているなんて思いもしなかった。

 やっぱり結賀は仁をよく見ているし、理解している。きっと、その理由は……。

「……なぁ結賀、俺の勘違いだったら全然聞き流してくれていいんだけどさ」

「うん?」

「結賀って、仁のこと……」

 結賀の顔が、リンゴみたいに赤くなっていく。

「あーそう、ミカの想像通り。俺は仁が、誰よりも大切」

『仁が好きだ』とは言わなかったが、結賀はそう取れる発言をした。

 多分俺の父さんが近くにいたから、そういったんだろうな。

 それにしても、やっぱりか。

「……結賀は俺に仁が取られたって思わなかった?」

「思ったよ。でもあいつ、俺が出る幕なんてないくらいミカに夢中だったし。それに、俺がミカを嫌いになれる要素とかがあったら、俺ももうちょっと頑張ってミカから仁を奪いに行ってたと思うんだけど、そんな要素全然ないくらい、ミカは良い子だったから」

 その言葉を聞いて、凄く嬉しくなった。こんなことを言ってくれる結賀を疑うなんて、あまりに馬鹿らしい。

「ありがとう、結賀」

「んーん」

 笑って、結賀は首を振った。

「結賀はその……母親に捨てられたから、仁を?」

「うん。俺も仁と同じで女嫌いだから」

 そういうことか。

「……結賀くんも、か」

「はい。俺も仁と同じで、母親に大切にされた覚えはないです」

「……そうか。仁くんと結賀くんがミカを大切にしてくれるのには、そういう理由もあるんだな」

 ウンウンと頷いて、父さんは言う。

「はい。俺らと似たような経験をしたミカなら絶対に裏切らないって確信があるから、一緒にいます」

「そうか。ありがとう、結賀くん」

 結賀の言葉を聞いて、父さんは嬉しそうに笑った。