一匹狼くん、 拾いました。弐


「結賀くん、仁くんは?」

 父さんが首を傾げる。

「まだ厨房です」

「そうか。仁くんの様子はどんな感じだい?」

「いやー、緊張とかは俺と一緒にいて解れたみたいですけど、おじさんの言う通り、アレンジとかをする様子は全くないっすね。ミカのお母さんに何か提案をする様子もありませんし」

 顔の前で手を振って、結賀は言う。

「やっぱりそうか。まぁレシピ通りにやる能力があるのは素晴らしいことだし、中にはアレンジが嫌いなお客様とかもいるから、レシピ通りならそれはそれで別に問題ないのだけれど、甘いもの好きなお客様とかは、パンケーキの生地がいつもよりさらに甘くなっていたりしたら、とっても喜んでくれるだろうからね」

 なるほど、言われてみれば、確かにそういうことはあるのかもしれない。

「でもおじさんも、おばさんも、仁に料理を甘くしてくれなんて言わなかったですよね?」

「ああ。でも、レシピ通りに作ってくれとも言わなかった。レシピを見せはしたけどな」

 確かにそれはそうだ。

「でも作り方が決められていたら、基本はそれ通りに作るんじゃないのか?」

 仁はそうしただけなんじゃないか?

「それはそうなんだが、なんというか、彼の場合は、それが極端だ。生地の焼き加減も、混ぜる分量もミリ単位でレシピ通りだ。それはまるで、ロボットが作った料理のように。……はっきり言って、緻密すぎて気味が悪い」

 予想外の言葉が返ってきた。……ここに仁がいなくて良かった。今の言葉を聞いたら、仁はものすごい落ち込むだろうから。