「結賀くん、仁くんは?」
父さんが首を傾げる。
「まだ厨房です」
「そうか。仁くんの様子はどんな感じだい?」
「いやー、緊張とかは俺と一緒にいて解れたみたいですけど、おじさんの言う通り、アレンジとかをする様子は全くないっすね。ミカのお母さんに何か提案をする様子もありませんし」
顔の前で手を振って、結賀は言う。
「やっぱりそうか。まぁレシピ通りにやる能力があるのは素晴らしいことだし、中にはアレンジが嫌いなお客様とかもいるから、レシピ通りならそれはそれで別に問題ないのだけれど、甘いもの好きなお客様とかは、パンケーキの生地がいつもよりさらに甘くなっていたりしたら、とっても喜んでくれるだろうからね」
なるほど、言われてみれば、確かにそういうことはあるのかもしれない。
「でもおじさんも、おばさんも、仁に料理を甘くしてくれなんて言わなかったですよね?」
「ああ。でも、レシピ通りに作ってくれとも言わなかった。レシピを見せはしたけどな」
確かにそれはそうだ。
「でも作り方が決められていたら、基本はそれ通りに作るんじゃないのか?」
仁はそうしただけなんじゃないか?
「それはそうなんだが、なんというか、彼の場合は、それが極端だ。生地の焼き加減も、混ぜる分量もミリ単位でレシピ通りだ。それはまるで、ロボットが作った料理のように。……はっきり言って、緻密すぎて気味が悪い」
予想外の言葉が返ってきた。……ここに仁がいなくて良かった。今の言葉を聞いたら、仁はものすごい落ち込むだろうから。



