一匹狼くん、 拾いました。弐


 結賀が俺と父さんに気を遣って仁の手伝いに行ってくれたので、俺は父さんと二人で話をすることになった。

 いや、もしかしたら結賀は俺達に気を遣ったのではなく、仁を心配して様子を見に行ったのかも?

 あるいはその両方か。まぁなんにせよ、結賀ってすげー良い奴だよな。

「……ミカ、学校は楽しいか?」

 浜辺を歩きながら、父さんは言う。

「楽しいよ。まぁ、最近やっと楽しくなったって感じだけど」

 浜辺にある貝殻を見ながら、俺は言った。

 夏休み終わったらまた学校行き始めないと。華龍のみんなや、緋也とも話したいし。

「そうかそうか。それなら良かった」

「うん」

「ミカは、虐待をしたあの父親が嫌いか?」

「……嫌いに、なりたかった。でもなれなかった。俺は親父に親友を殺された。親父のせいで、死にそうにだってなった。でも、それでも俺は、たぶんあの親父が、好きなんだと思う」

 非常に、腹立たしいことだけれど。でも多分そうなんだ。

「そっか。ミカはいい子だな」

 父さんが俺に近づいて、頭を撫でる。

 涙が溢れる。俺は、あのクソ親父に、ずっといい子だって言われたかった。俺のことを商品とか不良品って言う親父がいい子って言ってくれたら、それは俺を人だと認めてくれたことになると思っていたから。まさかその願いが、こんな形で叶えられるなんて。

 ああ、……神は気まぐれだな。願いを叶えるのがあまりに遅すぎる。しかも相手違うし。でもまぁ、叶わないよりはマシか。

 虐待に耐え続けたことが、少しだけ報われた気がした。

「なぁミカ、……教えてくれないか。今までされたこと、全部」

「……うん」

 俺は、虐待のことを全部父さんに話した。

「……ミカは沢山辛い想いをしたんだな。よく耐えた、よく今まで死なないでいてくれた。ありがとう。本当にありがとう。……そして約束する。もう泣かなくていい。傷つかなくていい。俺と蘭は絶対にミカを傷つけないし、泣かせない」

「うんっ」

 父さんの服の裾をぎゅうっと握りしめる。

 泣きそうだった。でもその涙は、悲しみの涙じゃない。

 嬉し泣きだ。実の親に大切にされていることがこんなにも満たされることだなんて、知らなかった。

 ……生きててよかった。死ななくてよかった。

 ありがとう、岳斗、仁。二人だけじゃない。みんな俺を生かしてくれて、本当にありがとう。

 死ななくて、本当によかった。心の底からそう思った。