一匹狼くん、 拾いました。弐


「そうか。だからミカは……」

 独り言のように仁は言う。

「……うん。話してなくてごめん、仁、結賀」

「いや、気にすんな。内容が内容だし」

 首を振って、仁は俺に笑いかける。

「ありがとう」

 俺は、母親はずっと俺を助けなかったことに罪悪感を感じていて、その罪悪感のせいで、俺を捨てられずにいると思っていたハズだった。

 でもそうじゃなかった。俺は、罪悪感から俺を大切にしているんだって、そう自分に言い聞かせておきながら、心の片隅で、『母親は自分を愛してくれている』と思っていた。

 今回のことで、それがはっきりと分かってしまった。

 俺は母親に愛されていなかったことも辛いが、そのことがわかってしまったことの方が、それ以上に辛い。あんな、俺が死にかけるまで助けなかったやつからの愛を求めている自分が馬鹿らしくて、本当に嫌になる。


 自分で自分に嫌気がさすとは、まさにこのことだ。


「俊平、ずっと辛かったでしょ? 大変だったでしょ。ごめんね、俊平を愛していたのに、そんなとこに連れて行ってしまって」

 泣き崩れた蘭さんが俺の頬に手を伸ばす。

「……蘭さんが謝ることじゃないですよ、人の裏の顔なんて、なかなか分からないものですし」

 俺の父親は、画家をしているからインタビューを受けたりされたりすることも慣れていたし、演技は俳優並だったからな。

「それでも言わせて。本当にごめんなさい、俊平。あのね俊平、……出会ったばかりだし実感も何もわかないかもしれないけれど、それでも言わせて。……私は俊平を、世界で一番愛してる」


「俺もだ、ミカ。俺も、ミカを何よりも大切に思っている。ミカが俺達に会いに来てくれて、本当によかった」


 悠介さんが俺の肩に手をやって、涙で顔を真っ赤にして言う。

「だったらなんで、ずっと会いに来なかったんですか!孤児院の人から、俺が誰に引き取られたかは聞いていたんでしょう!」

 なにか事情があったのかもしれないかもしれないのにこんなことを叫ぶなんて子供にも程がある。それでも、言わずにはいられなかった。


「……俊平がそこで幸せに暮らしているなら、邪魔をしない方がいいと思ったの。テレビで画家のモデルになった俊平がインタビューをされている時に、とても楽しそうに話をしていたから」

「……見ててくれたんですか」

「ええ。インタビューの動画は全部録画してDVDに撮ってある。まさかそれが、里親の人に言われてしてた演技だったなんて、思いもしなかったから」

 言葉の節々から、俺を大切に思っていることが感じとれる。

 なんで。どうして俺はこの人達に育てられなかったんだろう。

 神様は無慈悲で、残酷だ。