「さて。それじゃあまずは自己紹介からね。初めまして、元女優の美澄蘭です。本名は矢野蘭です」
「同じく元俳優の矢野悠介だ。俺はちなみに芸名も本名も同じだ」
「……えと、三上俊平です。それと、友達の仁と結賀です」
俺の言葉に合わせて、二人は軽く会釈をする。
「俊平は、今日はどうしてここに?」
「…里親と喧嘩して。俺父親から虐待されてたんですけど、母親との関係は比較的良好だったんです。でもその母親が、父親を庇うようなことをいって。……母親は、虐待されてる俺を、守ってはくれませんでした。でも、虐待されて怪我をした俺の手当を毎日のようにしてくれたし、俺を父親から逃がしてくれました。でもその行動は、愛じゃなかった。……母親は、俺を愛してくれませんでした。……母親は俺に言ったんです。俺の父親は元からああだったわけじゃないって、親友に裏切られて、変わってしまったんだって」
涙と一緒に、言葉が次々に溢れ出す。
「……母さんが父さんと結婚をしたんだから、父さんが母さんを庇う可能性があるのも、理屈ではわかっていたんです。でも、どうしても庇って欲しくなかった。だって、俺が死にかけたあの日、母さんはっ、虐待を見て見ぬふりしないで、俺を助けたんです。父さんじゃなくて、俺を選んだんです!! それなのに母さんは、俺の父親は、可哀想な人なんだって、そう言ったんです。……俺からすればあの父親は、可哀想なんて思う価値もないような人で、悪魔で、疫病神のような人なんです。……虐待を見てきた母さんはそれが分かってたはずなのに、父さんを可哀想な人なんだって、根はいい人なんだって言ったんです」
別に本当に可哀想だって、根はいい人だって言ったわけじゃない。でも母さんは、そうとれる発言をした。
「俺はあの父親を、可哀想だなんて思えない。いや、思いたくもない。……あんな、実の息子を殺そうとする父親を可哀想だなんて思う人と、一緒になんて暮らせない。暮らしたくもない。そう思ったから、本当の親を探しに来たんです」
話すのが苦手なはずなのに、口からどんどん言葉が溢れ出した。仁と結賀がいるから、話せたのだろうか。
……それとも俺は、誰かにこの気持ちを共有したくて、仕方がなかったのだろうか。
きっと後者だな。
俺は誰かにこのどうしようもない気持ちをわかって欲しくてたまらなかったんだ。



