「二人は、俺をいつか引き取るつもりだったんですか」
「ええ、恐らくは。里親に出すのを許可したのは、仕事が忙しくて、引き取る目処が立たなくなってしまったからだと思います。
すみません、私が里親の人の正体を見破っていたら、俊くんは今頃、本当の両親と暮らせてたかもしれないのに」
「……二人は、俺を好いてくれてたんですか」
「ええ、それはもう。二人のマネージャーさんがよくここに来て、俊くんの写真を撮ってました。私が話しかけると、マネージャーさんは言ったんです。『毎日子供の写真を撮ってこいとうるさくて、僕はカメラマンじゃなくてマネージャーなのに、本当に困りますよね』って」
瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
嗚呼、俺は大切にされていたんだ。名も知らない、会ったこともない本当の親に。
「ミカ」
仁が俺にハンカチを渡してくる。俺は小声で礼を言ってそれを受け取り、それで涙を拭った。
「……二人は今は芸能界を引退して江ノ島で海の家を経営していて、それはここからそう遠くない位置にあります。恐らく歩いて十分もかかりません」
いてもたってもいられなくて、雛菜さんに礼を言うと、俺は駆け足で孤児院を出た。
江ノ島の海に行くと、本当に海の家があった。
――パリンッ!
意を決して中に入ろうとしたら、その瞬間中にいた店員の手から皿が滑り落ちた。皿が割れて、中に入っていたかき氷が床に勢いよく散らばる。
「……俊平?」
店員が落とした皿に見向きもせずに、入口のとこにいる俺のそばにくる。
「「ミカっ、急に走るなよ!」」
俺を追いかけてきた結賀と仁が背後から肩を掴んでくるのと、店員が俺の手を握ってきたのは、ほぼ同時だった。



