雛菜さんが俺たちを案内したのは食堂だった。
幅が百センチ以上ありそうな長方形のテーブルが中央に置いてあって、その周りに三十個くらいの椅子が置いてある。
テーブルの奥にはキッチンがあった。
「どうぞ座ってください」
雛菜さんの声に押され、テーブルの端に横並びで腰をかける。
「お茶でいいですか」
俺たちが腰をかけたのを見てから、雛菜さんはいう。
「はい」
俺が頷くと、雛菜さんはお茶を用意しにキッチンにいった。
お茶が入ったコップが四つ置いてあるお盆を持った雛菜さんが俺たちのそばに来る。
雛菜さんはお盆からお茶を取ると、それを俺達のそばに置いてから、俺たちの向かいの席に腰を下ろした。
「あの、雛菜さんは……俺の本当の親のことを知っていますか」
「はい。……俊くんの親は、女優の美澄蘭と、俳優の矢野悠介です」
それは、十七年ほど前に電撃結婚をした芸能人の名前だった。
美澄蘭と矢野悠介は芸能人のなかでもかなりの美人で、二人が主演のドラマや映画は結婚をしても後を絶たなかった。
「……待ってください。確かに正直いって、ミカの容姿は芸能人の子供だって言われて納得するくらいとても良いものだと思います。でも、あの二人に子供がいるなんて話は、なかったはずです」
俺の隣にいる仁が眉間に皺を寄せて言う。
「……ええ、その通りです。あの人達は子供がいるのを公表していません。彼女達自身が、望んでそうしました。
二人がこの孤児院に来たのは、十六年ほど前。俊くんが生まれて、間もない頃でした。
二人は私に言ったんです。『仕事が忙しくて世話ができそうもないから、しばらくの間、ここで預かって欲しい』と。
その五年後に俊くんを引き取りたいという人が現れて、私は二人に許可を得てから、俊くんを里親に出しました」
……親父のことか。



