一匹狼くん、 拾いました。弐


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 俺達は露麻に連絡をとらないで、孤児院に行った。

 孤児院のインターホンを押して露麻の知り合いだと言うと、程なくしてドアが開いて、職員の人が出てきた。

 ロングストレートの髪が綺麗で、パッと見四十代くらいの物腰が柔かそうな女の人だ。

「この前露麻さんと一緒に来てくれた人達ですよね。楓さんの知り合いとか」

「はい。あの、今日はその子のことがあって来た訳ではなくて……その、俺は、三上俊平って言って、前ここに世話になってたことがあるんですけど、覚えてませんか」

 顔を隠していたフードを外して、俺は言う。

 職員の人が俺の顔を見て目を見張る。

「俊……くん?」

 職員の人が俺の髪を触っていう。

「とても大きく、なりましたね」

 職員の人の瞳から涙がこぼれ落ちた。

「え」

「あ、そっか。覚えてないですよね。五歳の時に引き取られたから。……初めまして、|寿雛菜(ことぶきひなな)です。私は俊くんが里親に引き取られるまで、ここでずっと世話をしてました」

 ……この人が俺の世話をしてたのか。

「すみません、覚えなくて」

「いえ。私も露麻くんと来てた時は気づかなかったので。あの時顔を隠してたのは、その傷があったからですか?」

「……はい。引き取られた人に虐待されて。露麻から聞いてなかったですか?」

「はい。露麻さんは、俊くんは元気だって言ってましたから。……虐待した人が、そう言わせてたのかもしれませんけど」

「間違いなくそうっすね」

 仁が勢いよく頷く。

「……そう。ごめん、ごめんなさい! 私がもっと早く気付いてたら、俊くんがこんな怪我をすることもなかったのに」

 俺を抱きしめて、雛菜さんは泣き叫ぶ。

 腕から伝わってくる温もりに、とても覚えがある気がした。 

 記憶にはなくても、身体は覚えているということなのだろうか。

「たくさん怪我したんだね、辛かったね」

 涙を流しながら雛菜さんは呟く。

 服越しでも、あざや切り傷が腰にあるのがわかったのか。

 ……俺は優しい人に育てられたんだな。

 五秒ほどすると、雛菜さんは抱擁をやめた。

「ごめんなさい、取り乱してしまって。

ここには何か用があって来たんですよね?

立ち話もなんだし、どうぞ中に入ってください」

 雛菜さんの言葉に声を出して頷いて、俺達は孤児院の中に入った。