五人で露麻に送って貰って、親父がいる刑務所の面会室にいった。
刑務所は壁も床も灰色で、パイプ椅子がちょこんと置かれただけの質素な造りだった。
「……親父」
「俊平、久しぶりだな」
向かい側の椅子に座っている親父は、俺が声をかけると、口角をあげて笑った。
声を聞くだけで鳥肌が立つ。
ガラスで隔たれているから、暴力を振るわれないのが唯一の救いだ。
「……親父、露麻が言ってた。楓が生きてるって」
「ああ、お前に話したのか」
「……露麻が、親父の命令で葬式の時遺体を偽装して、楓が死んだように見せたって」
「ああ、そうだ。露麻の言う通りだ」
目を見開く。そんなの冗談だろ?
「お前は騙しやすかったよ。露麻が俺の命令で女を殺したと思い込んでいたから」
「なっ……」
「俊平、もっと考えろよ。だってお前が死にかけたあの日、俺は女を殺したなんて一言も言っていない」
体の芯が熱くなって、怒りが増していく。
「でも、あんたは俺が人殺しって言ったのを否定しなかった!」
「肯定もしなかっただろ?」
ニヤッと歯を出して、意地悪そうに親父は笑う。
「親父っ!!」
殺意が湧き、俺は思わず目の前にあるガラスを殴ろうとする。
だが、そうする直前で、仁が俺の腕を掴んだ。
「……仁」
「ミカ、もう帰ろう」
俺は仁の腕を振りほどき、走って面会室を出た。



