一匹狼くん、 拾いました。弐


 五人で露麻に送って貰って、親父がいる刑務所の面会室にいった。

 刑務所は壁も床も灰色で、パイプ椅子がちょこんと置かれただけの質素な造りだった。

「……親父」

「俊平、久しぶりだな」

 向かい側の椅子に座っている親父は、俺が声をかけると、口角をあげて笑った。

 声を聞くだけで鳥肌が立つ。

 ガラスで隔たれているから、暴力を振るわれないのが唯一の救いだ。

「……親父、露麻が言ってた。楓が生きてるって」

「ああ、お前に話したのか」

「……露麻が、親父の命令で葬式の時遺体を偽装して、楓が死んだように見せたって」


「ああ、そうだ。露麻の言う通りだ」

 目を見開く。そんなの冗談だろ?

「お前は騙しやすかったよ。露麻が俺の命令で女を殺したと思い込んでいたから」

「なっ……」

「俊平、もっと考えろよ。だってお前が死にかけたあの日、俺は女を殺したなんて一言も言っていない」

 体の芯が熱くなって、怒りが増していく。

「でも、あんたは俺が人殺しって言ったのを否定しなかった!」

「肯定もしなかっただろ?」

 ニヤッと歯を出して、意地悪そうに親父は笑う。

「親父っ!!」

 殺意が湧き、俺は思わず目の前にあるガラスを殴ろうとする。

 だが、そうする直前で、仁が俺の腕を掴んだ。

「……仁」

「ミカ、もう帰ろう」

 俺は仁の腕を振りほどき、走って面会室を出た。