お母さんが働いて頑張っているとはいえ、小さな離島の民宿の給料なんてたかが知れてるし、お母さんに無理させたくないケンゴの気持ちは分かる。
僕だって、やっぱりりょーちゃんに負担が掛からないようにって色々考えたから。


「ケンゴは、動画編集出来るんだよね?じゃあさ、確実に稼げるかは分からないかもだけど、動画投稿とかしてみたら?将来のスキルにもなって一石二鳥じゃない?」


これからの現実的な流れを考えて重くなりつつあった雰囲気を、美矢は僕が買い与えたスマホをゆらゆらと動かしながゆったり、確実にぶった切る。

そのスマホに映るのは、どうやら飼い猫の動画チャンネルだ。


「動物の動画って凝ってれば伸び代あると思うんだよね。せっかくこの島猫島なわけだし。稼ぐためにはそれだけじゃなくて他にも企画したりするかもだけど」


現代っ子で都会っ子の美矢の提案に、しわしわと萎んでいたケンゴの背筋がぶわあ、と膨らんでビリビリと伸びきる。


「あたしもとらも、あんたのこと手伝える範囲で手伝うよ。頑張ってる人間が、あたしは好きだから」


ストレートな物言いと、柔らかなキラースマイル。それを向けられたケンゴはあっという間に顔を赤く染めあげる。

1人の男の子が、憧れと恋に目覚める瞬間だというのが、爽やかに伝わってきゅう、と胸を鷲掴んだ。